お大師様の言葉1

仏教とはもともと「人間はどのように生きるべきか」を命題とした学問です。決してお葬式を行うために生まれた教えではありません。お釈迦様も、その答えを求めるべく出奔されたのは、皆さまもご存じのとおりです。真言宗祖弘法大師(空海)は、その著「般若心経秘鍵」で「それ仏法遥(はる)かに非ず、心中にして即ち近し、真如外(ほか)に非ず、身を棄てて何(いづく)にか求めん」つまり、正しい信仰に目覚め、一心に修行を重ねれば、その人の人間性は限りなく高まり、ついには生きながらにして仏と等しい境地に登ることができる。これをお大師様は「即身成仏」と呼ばれました。一人一人が自覚をもって真理に目覚め、慈しみと智慧に満ち満ちた世界が実現すれば、それが即ち仏の世界、悩み苦しみ迷いのない曼荼羅絵図の世界=密厳浄土であると。人間の可能性に賭けた教えとも言えますが、私たちはどこまで自覚できているのでしょうか?